さて、金泉を出て直指寺駅を過ぎると、名代の秋風嶺越えの勾配線となり、隧道を潜って慶北、忠北両道の境界を越え海抜217メートル、京釡線中の最高地点秋風嶺駅を通過する。旅窓遠く内地を離れ、何か一詩をものしたい様な感懐のあるところ。これから次第に下って山間の小駅
黄澗 を経て永洞駅に着く。ここは忠北南部の盆地にあり、綿花、木炭の多産地で、蘆嶺山脈背部の要衝全北茂朱方面への通路に当たる。
線路は錦江上流の渓間に沿って深川・
伊院の二駅を過ぎ、幾回となく上流の鉄橋を渡って稍広い耕地に出て沃川駅に入る。此の付近の主要産物は米、大豆、叺等で、ここの奥地には湖西の名刹俗離山法住寺があり、聊か無遠慮な俗離山とは少々恐れるが、珍しい山紫水明と伝えられる。沃川を出て忠清南北道の境、
馬道嶺隧道を潜ると眺望忽ち開濶、暫く平野を過ぎて忠南交通上の要衝大田駅に着く。特急
「あかつき」号が大邱から2時間10数分、158キロ餘を走破して第二に停まるところ、駅は湖南線の接続地点である。