PO Far East

Peninsular & Oriental Steam
Navigation Co P&O　の極東ルート

イギリスの植民地であったインドと本国の貿易は、東インド会社が運営する喜望峰回りの帆船で4ヶ月もかけて行われていた。一方、スエズ地峡を越えるルートもあったが、スエズ運河は開通しておらず、地中海側とインド洋側の2つの航路を陸運が結び、月に1度の連絡をしていた。もし逆風で船が遅れれば1ヶ月間の遅れが生じていしまうこともあったという。当時はアレクサンドリアで船を降り、運河とナイル川を使ってカイロ、そこから160km の砂漠越えのルートであった。P&Oは、アレクサンドリア＝スエズでの、大型艀によるナイル川運航、砂漠区間でのいくつかの休憩所の設置などの改良を行い、スエズ地峡経由の利便性を大幅に改善し、1842年にイギリス政府の認可を受けて、スエズ～アデン～セイロン～マドラスに蒸気船による航路を設けた。1849年にはシンガポール～香港～上海、1852年にはシンガポール～豪州、1859年には上海～長崎間、1864年には横浜まで延長されている。1869年には、スエズ運河が開通し、スエズ地峡ルート開拓独占で得ていた莫大な利益はすべてなくなってしまった。競合他社船が新たに技術開発された効率のよいエンジンを積んでスエズ運河を経由する脇で、旧式のエンジンの船ばかりのＰ＆Ｏは経営危機を迎えることになり、1870年から船質改善に力をいれ、1889年までに57隻の新造線を投入して、ボンベイ線、シドニー線、上海線に投入していった。

1896年から５隻(Egypt, India, China, Arabia, Persia)の 8000総トン級の船が就航、1903年にはより大型化された"M"クラスが就航している。
"M"クラスは 9500-1200総トンと大きさに違いのある姉妹船のシリーズだった。 (1903年建造 Mongolia-9500gt, Moldavia-9500gt, Marmora -10500gt, 1904年建造の Macedonia-10000gt, 1905年建造 Mooltan-9000gt, 1908年建造 Malwa - 11000gt, Morea-11000gt, 1909年建造 Mantua-11000, 1911年建造 Maloja-12500gt, Medina-12300gt)
1914年にはインド皇帝を意味する Kaisar-I-Hind（11500gt)、1920年には 16000総トンの Naldera と Narkunda が、1923年には、21000総トン級の Mooltan,　Maloja が、1925年には、16500総トン級の"R"クラスの Ranpura, Ranchi, Rawalpindi, Rajputana と一回り小柄な 15000総トン級の Cathay, Comorin, Chitral が、1931年には、15000総トン級の Carthage, Corfu が投入され、アーストラリア線には 2万トン級の船が、上海（横浜）線には、小柄な 1.7-1.5万トン級の船が使われるようになった。

<P&O客船への臨港列車>
1897年、カレーとマルセイユ岸壁　を結ぶ臨港列車がワゴンリの豪華編成で運転を開始した。1935年には列車名を P&O Express と改称している。1939年の時刻表には
マルセイユを毎週出港し、ボンベイ・コロンボで分岐して、オーストラリア、日本に隔週到着するP&O船に連絡するように週１回の運転になっている。