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 関釜連絡船は120カイリの朝鮮海峡を横断してまず釜山桟橋に横付けとなり、僅か数十歩で直ぐ列車に接続している。釜山−京城間の特急は「あかつき」号、これは内地の燕号を連想するもの。途中大邱大田のわずか二駅に停車するだけで450キロ餘を6時間45分で走破し、安東から奉天までの安奉線をあわせて、釜山→奉天間を走る急行は「のぞみ」号、さらに友邦満州国の首都新京まで延々1630キロを直通する急行は「ひかり」号である。
 さて列車は悠々釜山桟橋から釜山駅を経て市街を左に見ながら、元京釡線開設当時の起点駅であった草梁駅を過ぎ、朝鮮紡績・田中車輌の工場街に入り釜山鎮駅に着く。ここは有名な東莱温泉、あるいは往昔新羅の都であった慶州等へ行く東海南部線の乗換駅である。列車は釜山鎮を出て全く市街と離れ、ところ禿の丘陵地や田畑の間にある低く丸い藁屋根の鮮農の家、あるいはポプラの樹などを見ながら、寂しい沙上駅を過ぎ、間もなく洛東江流域の肥沃な平野を走り、鮮内第一の長橋洛東橋を眺めるうちに亀浦駅に入る。梨は年産五千トン、殆ど内地向けに輸出されるという。これから線路は洛東江本流沿いに明るい平坦線を進み、勿禁駅を過ぎて、洛東江畔の景勝地院洞駅を通る。この駅から間もなく山間に入り、しばらくして慶全南部線あるいは鎮海線の乗換駅三浪津に着く。駅に名物の梨・苹果それから名代の鰻丼を売っている。慶全南部線とは慶尚南道、全羅北道の中部横断線南部の呼称で、現在は馬山を経て晋州駅まで到り、途中昌原から鎮海支線が分かれている。馬山は有力な酒造地、名水蒙古井戸の水質を誇り、また各地への海運の便がよい。晋州は米の多産地、綿花、葉煙草の栽培生産も相当に多い。また鎮海は朝鮮南部重要海軍要港、その支線には長大な長福山隧道が穿たれている。
 
欧亜大陸への国際幹線
京釡本線案内
京釡本線案内 2
京釡・京義・安奉経由
 特急「あかつき」号は釜山から124.8キロを走り続けて初めてここにて停まる。大邱は慶北慶南両道をその経済圏内に包含する商工業都市で穀類、果実類、綿花、煙草、莚蓆の産出が多く、毎年十二月に開かれる薬令市は、その開市季一ヶ月を通じて数万の人が集まり、白衣の群が肩摩轂撃の大盛況を呈する。殊に朝鮮特産の莞草製品は出色の名産で大きな将来をもつ。駅前付近夜はネオンの色も華やかで、その繁盛を物語っている。
 大邱を出発して列車は北へ走り枝川・新洞の各駅を経て、付近農作物の集散地倭館に着く。このあたり果樹園が広い。総じて朝鮮の山野は侵食の進んだ老年敵地形で、如何にも平凡と云えばその一語に尽きるが、もともとこの大幹線も日清・日露両戦役のため火急に敷設されたもので、改良補修を加えて今日の堂々たる広軌鉄道に育てあげた次第  で従って沿道の風景的条件など一顧の価値もなかったわけである。いまなお旅客の印象は荒寥とした景観に終始する「朝鮮」を見るばかりだが、揚柳などはなかなか棄て難いものである。列車は洛東江を渡って若木駅を通る。付近には将来有望を称されている龍鳳の水鉛鉱山がある。
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京釡本線案内 2
朝鮮鉄道略図
欧亜連絡
旅窓に学ぶ 西日本編 
ダイヤモンド社
昭和13年8月発行
 
三浪津を出て洛東江支流の鉄橋を渡り、密陽江に沿う楡川の小駅を経て慶尚南道から北道に入り、荒涼とした山地を進んで柿の産地清道・南省ケンの諸駅を過ぎ、京釡線中の最大建造物として名高い省ケン大隧道を潜る。延長7623フィート、全鮮第二の長隧道で、かつて京釡線改良工事はこの難関突破が最大の問題であったところである。これを通過して列車は山麓の寂寥な寒村に置かれた三省駅に入り、続いて漸次琴湖江流域に下って、慶山・顧母などの小駅を過ぎて、南鮮有数の大都市大邱府に進みて新川の橋梁を渡って繁盛なその大邱に着く。
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